子供のころから何か象徴された図形が好きでした。たとえば、家に紋帳があったのですが、そのおびただしい数の家紋を飽きることなく見ていました。
いま思い出すとそこには、草花や蝶、円・三角・四角・・・などによって構成された纏まりある調和したものであり、きっとそこには、象徴される印章というものには、大自然の摂理や秩序、調和が表されているのだなと感じます。
現代のBharatanatyam のダンスフォームを、幾何学図形に照らし合わせて垣間見てみたいとおもいます。
はじめに、stanaka:スターナカと呼ばれる 正面を見、真っすぐに立った姿勢。さらに両手を真横に伸ばした natyarambe:ナーティヤランベ のポジションは、“ダンスのはじまり”という意味をもち、その姿勢は<十字:cross>の姿勢を示しています。
この<十字>は、縦・横の交差であり、以前に書きました時間・空間の異なる表現のかたちであります。そしてその意味は、やはり“物事の始まり”であり、宇宙の動き出す直前の姿であります。ここには全き陰陽の調和が内在しているのです。
つぎに、<十字>が動き始めると、<卍:まんじ>となり,ダンスフォームの中では swastika:スワスティカ と呼ばれる脚のポジションが相当します。
この意味には、吉兆・瑞祥であって、すべてが慶びの内に創造されてゆくことが、暗示されています。
もうひとつ、バラタナティヤムの基本姿勢で、ayata:アーヤタと呼ばれる、足先・膝を両外側に向け菱形になるように、腰を落として中腰になり、両腕も肘を外側に向け、手首をウエストにセットした、この姿勢なのですが、頭頂と両膝の3点を結ぶと上向きの三角形が示され、次に、両肘の先と両踵の一点を結ぶと、下向きの三角形が示されます。これが合わさると六ぼう星という図形となり、その意味は上向き三角形が男性エネジーを、下向き三角形が女性エネジーを表し、創造を意味しています。
また六角形や五角形はよく結晶のかたちとして見られますが、バラタナティヤムの基本姿勢のなかに、その図形が内蔵されているとはなんて驚きの素晴らしい、エネルギッシュさを感じる、そして調和した姿なのでしょうか。