からだ・呼吸・こころ

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もう数十年も前になりましたが、yogaをはじめた頃、“肉体と心を繋ぐ、唯一の要が呼吸である。”と教えられた時、とても感動し、新鮮な気分になりました。


ただ無意識にしていた呼吸に、そのようなお役目があったとは・・・けれど考えてみれば、わたしたちは自然な営みの中で、疲れたときは大きなため息をつき、笑うときはお腹から息を吐く腹式呼吸をし、悲しいときは浅く吸う息で泣いている。自然な動作を当たり前にこなしているのです。
舞踊の道を歩んでゆくなかで、その自然な行為も、はじめは、舞踊のフォームや手の位置・動かしかた、足の運び方、さらに与えられたテーマの意味・内容を考えなくてはならないために、緊張や余裕のなさ、頭で考えることに精一杯で、不自然なものとなってしまいがちです。とりわけ感情表現となると、その心の内を表すだけに、身体ムーブメントやそれにまつわる息づかい、感情の微妙なニュアンスは、この身体と呼吸の関係・心と呼吸の関係を今一度みつめてみることが必要です。

Yogaの中でも、心とprana:息(宇宙の普遍の力)との密接な関係が、よく伝えられています。
私がとても興味を奪われた一節の詞があります。それは、南インドのある大聖者の詞らしいのですが、“ 心の行くところへ 息は従う ” というものです。
これは、舞踊に関する偉大な著述家たちが、身振りの動き・感情の表現のその可能性に秘められた重要性を印している格言を思いださせます。

“ 手のゆくところ  目が伴い
   目のゆくところ  心が赴き
    心の届くところ  感情が表れ
     感情の起こるところに  味わいが生まれる ”

このすばらしい流れの過程のなかに、先ほどの “心のゆくところに 息は従う”を挿入してみると、内なるこころの動きが、目に見える動きとなって、見えるのです。